今朝の散歩中のことである。
折り返し地点の公園を出た所で、自転車を支えている女性がいた、やや涙目である。「あの、すみません」と私に尋ねる。私は、彼女の顔を見て、次の言葉を待った。
「コンビニってこの辺にありますか?」
声も半泣きである。
「どうかされました?」
「今、自転車で転んで、すごい怪我しちゃって・・・」
彼女が手の指と手の平、そして膝を見せてくれた。擦り傷ではあるのだが、出血が多くて、範囲が広く、まあ、痛そうなこと。骨折しているような感覚はないらしい。とりあえず、絆創膏をコンビニで買いたいわけだ。
「コンビニは、ここからだと一番近くても、駅まで戻らないとないんですよね。でもね、薬局があったはず。ここの突き当りの道の手前にね、病院があって、その迎えと、あと、その横にも薬局があったはず!」
「じゃあ、そこに行ってみます」
彼女は、怪我した手の平で自転車を支え、何とも不安げである。薬局自体は分かり易い場所にあるが、果たしてこの時間にやっているのか?私も、そして彼女も心配そうだった。それで勢い、私は「じゃあ、一緒に行きましょう」と。
「すみません」
「いいの、今日は時間あるしね」
そして薬局に向かって歩き始めた。小雨であるから、私は傘を彼女にも差し掛けて歩いた。
大学生だった。1年生だという。近くに国立大学がある。方向的にも、そこの学生さんだろう。
「これくらいの雨ならと思って自転車で来たんですけど、雨がどんどん強くなって、すごい勢いで滑ってしまって!なんか涙でちゃって。一限の授業、8時40分からなんですけど、間に合わないから友達に連絡しました」
「まあ、大丈夫でしょう」
「はい。一応、証明書を書けば・・・・」
転んだ証明書だろうか?それから彼女は続けた。
「というか、傷を見せれば先生にも証明できますかね」
「うん、出来る、出来る。こんな大変なことがあったんですよって」
なまじ、まだ1年生だから(しかもまだ4月だし!ピカピカの一年生)、一限の授業にも真面目に出るのであろう。あるいは、1年の午前中は、いつの時代も、どこの学校も、必須教科が多いのかもしれない。いずれにせよ、身体第一である。欠席も遅刻も、全く深刻ではない。
病院の迎えの薬局は閉まっていたが、病院の横の薬局はやっていた。自転車置き場に自転車を置くにいくのは手間であろうから、私はその自転車を預かって、薬局週辺に突っ立っていることに。お金を持っているかどうか聞くと、持っているとのことで、彼女は、1人でささっと絆創膏など買いに薬局に入った。
程なく、彼女が現れた。一通り、血をふいて絆創膏したようだ。一段落である。
「本当に、本当に、もう本当にありがとうございました」
「いえいえ、気を付けてね」
私は、彼女に自転車を渡し、軽く会釈して、きた道を戻った。
実際、大したことはしていないのだが、礼を言われると、自分がまともに思われて安堵する。真っ当な人間であることを証明するのに必要なポイントの少しをゲットしたような。
さて、
昨夜は、自信作の夕飯にひどくダメだしされたことで、ブツクサ文句を言った私。あげく、もう作らない!一切作らない!弁当もね!と脅し(結局作りましたよ、そりゃ)、続けて、主婦業のアホらしさを、様々な表現でアピール・・・。
それで、結局、
私は、自分の言葉にも、息子の言い返す言葉にも、夫の無言にもイライラし、休肝日であるにも関わらず、月曜に引き続き(月曜も休肝日の予定だった)、通常より多めにワインを飲んでしまった。
(ちなみに、娘は、こういう時、黙って静かに自分の好きなものだけを適当に食べて、ご馳走さま~と言って、さらっと軽やかに自室に移動。「ママの料理はおいしいよ💕」と明らかに嘘のラインを送ってきたりする。嘘でも、いや、分かり易い嘘ゆえ、癒されてしまう。まあ、彼女は典型的な第二子である・・・)
それにしても、
家の中では、イライラして、ピリピリして、ヤケ飲みして、やさぐれ母さん。外では、意外と、穏やかで、ほわわんと、親切な散歩おばちゃん・・・。
親切なおばちゃんをやれるだけ、まだまともだな、と、私は今朝、少しほっとした。
それを思うと、今朝、私に感謝してくれた大学生の彼女にもありがとうと言いたい。私を頼ってくれて、つまり、私に、(私が)感謝される理由を提供してくれて、ありがとう。
散歩の折り返し地点は公園だが、週末のジョギングの折り返し地点は、今日案内した薬局の横の病院である。
公園の花々(4月20日の朝 散歩中)と、病院前の花壇(4月20日の夜 ジョギング中)