寛容ばあさん

朝、美容院へ。白髪の根本染め。

今まで美容師さん2人しか見たことがなかったが、もう1人増えていた。

元からいた2人の男女の美容師さんのうち、女性に担当してもらうことが多い。彼女は静かでありながら、お客さんが少なくて余裕がある時は、小話を用意してくれていて、それが楽しい。私も小話が好きなので、彼女の話を受けて、自分も小話を提供する。

今日も彼女に担当して貰ったが、もう一人、新しく入った女性美容師さんの存在感が強すぎて、何となく、小話気分にはなれず、担当の彼女も、私も、終始黙っていた。

新しく入った方は、推定年齢、アラカンである。いつもの美容師さんは、恐らく、私同様、アラフィフである。アラカンとアラフィフという年齢差もあると思うのだが、担当の美容師さん(以下、アラフィフさん)は、どことなく、新しい方(以下、アラカンさん)に遠慮気味である。しかし、アラフィフさんは、立場上は先輩だ。

ラカンさんの存在感の強さを一言でいうと、言葉遣いだけは、かろうじて丁寧なのだが、アラフィフさんに話しかける時の声がやけに大きく、なおかつ、美容師さん同士でそっと話せばいいような事を、店中に響く声で話すのだ。例えばアラカンさんはアラフィフさんに言う。

「この機械さあ、古いですよね。私、嫌なの。絶対に嫌です。これ、変えてもらいましょ・・・」

何の機械かさっぱり分からないが、会話の続きや、アラフィフさんの返事から、機械の正体がなんであれ、ともかく、アラフィフさんとしては、別に古くても何とかなっているし、自分は特に不便だと思っておらず、むしろ、新しくする為の申請が手間である・・・という、まあ、そんな状況が掴めた。

しかし、

ラカンさんは、アラフィフさんのそんな思いを全く汲み取らず、機械を新しくする気満々で、その手続きも、恐らく話を聞いている限り、アラフィフさんがせざるを得ない感じだ。アラカンさんが、何気な〜く、されどガッツリ、アラフィフさんに一仕事押し付けているわけだ。

その後、またお客さんが来て、アラカンさんが、なんやかんや対応していたが、その時の声も大きいので、全部聞こえてくる・・・

「・・・それそれ、それがすごく重要なんです!ダメです、そんな適当な感じではね・・・薬剤の色味ってね・・・」

親切といえば、親切だが、お客さんの反応からすると、恐らく、余計な情報である。お客さんは、こだわりの少ないタイプだ。

黙って静かに、前回と同じ色に染めてくれ。説明は要らぬ。白髪が染まりゃあ、それでいい。早く終わりゃあ、それでいい。

そんな心の声が、私の背中にさえ聞こえる・・・。

なぜ察しない?

ラカンさんは、その後も、延々と話して、膝にタオルをかける、かけないの気遣いもするのだが、そういう自身の気遣い1つにも、

ここは意外と座っていると冷えるんです!だからね、寒くないと思ってもね、絶対に後で冷えたりしてね、だからですね・・・・」

とか何とか、長めの註釈が入る。時に、そういう註釈をサービスとし求める方も、探せば居るやもしれぬ・・・。しかし!!今日その時のお客さんは、求めていなかった。だって、お客さんの返事なんて、もう、低いトーンで「あ、え、はい」が、かろうじて一回聞こえただけだもの!

ラカンさんは、恐らくだが、あまり、いい人ではないだろう。です/ます口調だけど、ぞんざいで、つまり、丁寧語でありながら、丁寧じゃないのだ。相手の扱いが。

彼女は、自分の意見を通したい、絶対に自分の意見が正しいと思って、気が強いというのとは、また微妙に違うのだが、自分を絶対に譲れない人なのである。負かす気はないし、マウントにもあまり興味なく、ただ、もう、DNAレベルで、すさまじく頑固なのだ。(あくまで、私の憶測だが)でもって、こういうタイプって、親である場合、子供とも、えらく揉めていそうだ・・・。はい、余計なお世話ですが。

さて、

午後、出かけたついでに、娘に頼まれた、某メーカーのニキビ予防のジェルを買うことにした。私が行く店舗は、若い店員さんが、明るくも、さっぱりしていて、心地よい。愛想はすこぶる良好で、その割に、私が買い求める以上のものは薦めず、けれど、サンプルは下さる。

また、丁寧な説明を必要とする方(お年寄りとか)には、まめに接客している。要するに、入りやすい、感じの良い店だ。

ところが、である。本日は、新しい店員さんがいた。私くらいの年齢か、もう少し上か、落ち着いた感じの方であった。何せ落ちついているし、普通に愛想もいいし、私は、特に多くを考えず、娘の使っていたジェルを見つけて手に取って、彼女に、「では、これでお願いします」と言った。そこからである。彼女の暴走が始まった。

彼女 新商品を今からお試ししませんか?

私 あ、急いでいるので・・・すみません

彼女 新商品、お顔ではなく、手だけで体験することもできますが、いかがですか?

私 大丈夫です

彼女 お急ぎですものね。でも、こちら、本当におススメなんです。肌にしっかり浸透する感じが、もう、本当にびっくりするくらい実感できて、翌朝はですね・・・・・(結構長く続く)どうでしょうか?

私 すみません、大丈夫です

そして、何とか支払いタイム。

彼女 ××カードはお持ちですか?

私 いいえ

彼女 今、ここで入会されますと、2000円分のクーポンがですね・・・

私 すみません、大丈夫です

彼女は、にこやかに笑いながら、サンプルを入れてくれた。何かと断っている手前、私が恐縮しながら礼を言うと・・・

今度は、そのサンプルに関する長い説明が!!😨

間違いなく、悪い人ではないと思う。先ほどのアラカンさんに比べたら、頑固ではなく、多分、普通に謝ったり、恐縮したりすることも出来る人だと思う。ただ、客のニーズに答えるにあたって、何かが悪いんだろうな。何かが足りないのだ。何だろう?相手の性格や意図を、会話から直感的に推測する力あたりだろうか。

つまり、私を見て、今までの店員さんなら、せっかちで早く帰りたい人、と察し、その特質を、ある意味、尊重してくれたのだ。が、今日の方は、察しない上に、自分の欲求を尊重したわけだ。(繰り返すが、そうは言っても、この方は、悪い人ではない)

サービス業に限らず、仕事に限らず、とにかく、自分の欲求を満たす為だけに言葉を発するのは、つくづく良くないなあと、今日改めて思った。そういうのは、日記とか、それこそブログとか、SNSに記せばいい。(人のSNSのコメント欄は除く)

メールでも、ラインでも、対面の会話でも、特定の誰かに向かって言葉を発する場合は、ある程度、頭を使うことが礼儀だと思う。欲求そのまんま、むき出しの私の言動を受け止めて・・・・って、赤ちゃんじゃないんだから!

しかし、家族だと、結構、この頭を使うことを怠りがちだ。甘えですな。遠慮がない分、ついついね。

私は実感としてあるのだが、たとえ親子でも、頭を使って会話した方が、楽しい。断然、和む。

頭を使うことは、要するに気遣いだ。気遣いは、相手を認め、自分を譲るという、寛容な精神が基盤にある。

となると、本日の結論としては、私は寛容でありたい、と、まあ、これに尽きる。

前にも書いた気がするが、時に、人に対して、負の感情に襲われた際は、まず、自分ラブになり過ぎていないか検討したい。(どう考えても、全然自分ラブになっていないぞ、という場合は、婉曲的に訴える?・・いや、逃げるのがいいだろう)

意地悪ばあさんとか、頑固ばあさんとか、吝嗇ばあさんとか、自己中ばあさんとか、冷酷ばあさんとか、どれもこれも困ったものだ。そんなんで生涯を終えるのは避けたい。寛容ばあさん目指して、日々、穏やかにいこう。絶対、それが心身の健康にもいいはずだから。

青島幸男さんの、意地悪ばあさんは、好きだったなー。

f:id:April15:20240420215349j:image